2014年5月19日月曜日

心得 第四十六 「慎重を要する舅の立場」

親族関係のけじめ」の一項で「なぜ本家を大事にするか」から続くものである。
《次に、自分の娘を他家に嫁がせ、男子が生まれてから後にその夫がなくなり、幼い孫が跡継ぎの立場となったため、これからのことを婿方の親類と相談するといった場合には、十のものならば八つ、九つまでを婿方の親類にまかせて、こちらはひかえ目にしている心掛けが大切である。
但し、娘の嫁ぎ先が、婿の生前から家計が苦しく、その始末で親類たちの負担となっているような状態であれば、苦労している我が娘の世話をしてやるのは当然のことであり、あれこれとしてやらねばなるまい。
婿が亡くなったあとでも、何の苦労もないほどの暮らしであるとか、たとえ少しでも財産があるようであれば、舅の立場から差し出がましいことはいっさいやらぬという慎重な態度をとることが武士の本道である。
そうでないと、「孫がまだ幼いうちに、わが娘の内々の相談をして後見役をしているのは、どうも納得がいかぬ」などと、他人の批判が出てくるに相違ない。
次に、一族の本家筋、または先祖の主人筋、かつての上役といった人々の家が衰えて、みるかげもなく落ちぶれてしまった時、これを少しも粗末に扱うことなく、昔からのつながりを重んじて何かと配慮をするというのは、これまた武士本来の精神である。その時々の相手の景気ばかりを気にして、威勢がよいと思えば敬うべきでない者をも敬い、衰えたとみればいやしんではならぬ相手をもいやしむようであっては、まるで町人百姓同然の心がけであって、武士本来のあり方とはいえない。》


続いて、親戚となった他家との関係・つきあいについて語る。
武士には歩むべき道がある。立場を重んじ、本来あるべき姿・形を整えることがそれであり、恩に報いることで筋を通した。つまり義を貫いたのである。体面を重んじ、面子を損ねることを慎んだのである。男系の血縁関係を中心に家族内の序列が決められ、他家との関係も整えられた。内外意識はこうして形成されたと考えられる。イエ制度については『イエとしての文明社会』に詳しい。


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