勝部真長著 『武士道』

 結語
私は武士道を考えるとき、同時にヨーロッパの騎士道について連想せずにいられない。騎士道は西洋中世の封建社会に、キリスト教の世界観を背景として特色ある階級倫理を形成した。騎士道の倫理は、ディシプリンないしエチケットとして発達した。つまり「社交の倫理」として殺伐さよりも慇懃さに訓化するものである。騎士たる前に児童となって厳格なエチケット、出処進退の作法、特に女性崇拝の精神を身に着けなければならない。中世騎士道の典型は、やや戯画化され誇張された形にではあるが、セルバンテス作「ドンキホーテ」によく描かれている。
しかもこの中世騎士王から現代西洋の紳士道(ジェントルマンシップ)が生まれてきた。ジェントルマンシップとは何か。少なくとも三つの特徴を挙げることができるであろう。
第一は、ぶらないこと、背伸びして知ったかぶりをしたり、金のあるふりをしたりしないこと(not Pretend to・・・・・)
第二は、一貫した信念()の持ち主であること。
第三は、単純素朴ということ。東洋の語で「剛毅朴訥は仁に近し」というのに似ている。
要するに以上の三点が紳士・淑女の条件として考えられ、ウィンストン・チャーチル卿夫婦や俳優のチャップリンなどもその例に挙げられるのである。
今や我が国の課題は、伝統としての武士道を骨董品のように後ろ向きに扱うのでなく、前向きに、発展的に、この武士道から新しい現代の新指導を形成することでなければなるまい。

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