「奉公はその日限り、寸前は暗闇」の一項で、「士気を高める”一日限り”の覚悟」を受け、「家族の病気で欠勤は許されるか」へと続くものである。
《また、月のうち何日ずつなどと定められている勤務に出るときの心構えとして、たとえばその日の暮六つ(午後六時)が交替の時間のすれば、主君のお館と、自分の宿所との距離、日の長さなどを考え合わせて、どのような場合も、自分がいる場所をいくらか早目に出るようにすべきである。
それを、どうせ出ねばならぬ勤務先へ出るのを嫌がって、茶を一杯、煙草を一服などとぐずぐずし、あるいは女房や子供との一言ずつの雑談に時を過ごして、遅くなってから宿を出発し、急にあわてだして、行き違う人の見分けもつかぬほどに道を急ぎ、汗をかきかき番所に駆けつけて、寒中にも扇子を使いながら、「ちょっと、やむを得ない用事があって遅くなりました」などと体裁のよいことを言ってみても、心ある人は必ず、なんと間の抜けた口上よと思うであろう。
そもそも、武士の勤番という勤めは、仮にも主君の御座所の警固の役であるから、武士の奉公としては第一に重い勤めである。
したがって、たとえどのような事情があろうとも私用のために遅参など、あってよいものではない。
また、自分が早く出勤していても、交代の時間に代りの同僚が遅れると、もう尻が落ち着かなくなり、大あくびをし、主君のお館の中に少しでも長くいるのは嫌だと、帰宅を急ごうとするのも、極めて見苦しいことであるから、慎むべきである。》
一言すれば、「〈本末転倒〉を戒めている」のである。
急ぐ姿は見苦しい。急ぐのは「心ここに非ず」、つまり「忙しい」「急(せ)く」姿である。呼吸は速くなり、乱れ、困惑・困窮につながる姿となる。
急ぐのは火急の時、変の時である。常の時には平常心を保つことである。
〈落着〉落ち着く、あるべきところに定まることが肝要であり、〈一事が万事〉、用心して、余裕を作り出すことが求められたのである。
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