2014年11月5日水曜日

心得 第六十八 「高笑、音曲をかたく禁ず」

近所の不幸につつしみを忘れるなの一項である。

《奉公を勤める武士が、わが屋敷なり、お上の長屋なりに住まっている時、近所の同僚の家に重病人ができたり、不幸でも起きたような場合には、たとえその同僚と親しい関係にはなくとも、大声で笑ったり、音曲などすることは固く慎み妻子や召使にも之を厳しく言いつけねばならない。
これは、相手の家のものへの配慮というだけではなく、他の同僚の目からも、無遠慮、不作法の至りとの軽蔑を受けぬためのつつしみである。
以上、初心の武士の心得として申すものである。》


近所に不幸が出た時には高笑、音曲を慎むことが礼儀であった。
そうでなければ、無遠慮、不作法として軽蔑を受けたのである。
思えば、昭和天皇が逝去されて大葬の礼が行われた。
閣議決定された「昭和天皇の大喪の礼当日における弔意奉表について」が文部科学省から通達され、「歌舞音曲を伴うものについては、これを差し控えること」が求められたのであった。

一部に反発の声が上がったことには隔世の感があり、価値観の変化が伺えた。
周囲への配慮が欠けた時、信頼の基盤は瓦解していくように感じられる。
思量を重ねたところに、〈慎み〉が、「心に真」が生まれるのである。

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