2014年6月7日土曜日

心得 第五十三 「倹約とケチの相違」

「倹約もご奉公のため」の一項で、「小心者の浪費は身の破滅」から続くものである。

《そこで、小身の武士としては、平常からそのようなことを考えて、収入にふさわしい暮らしをし、少しでも不必要なことには金を使わぬよう心がけて、これはどうしても必要ということだけに金を使うようにするべきである。これが倹約の道というものだ。
ただし、倹約ということについては、一つの注意がある。それというのは、大身、小身ともに、倹約倹約といって出費を切り詰め、暮らしを質素にして節約に努めているうちに、まもなく家計が持ち直し、やがては手にしたことのない金銀がたまってくる。そうなると、ひたすら金が貯まることを喜び、減ることを惜しむ一方の卑しい根性となって、しまいには、出すべき出費もいやがり、出し惜しむような義理知らずとなってしまう。
このような者は、ただ金銀をため込むことばかりを考えているのであって、倹約ではなく吝嗇というものである。百姓町人ならばともかくとして、武士の吝嗇とあっては「三宝の捨て者(仏から見放された役立たず)」といって、最も嫌われるものなのだ。
なぜならば、人間として千金にも代えられぬ尊いものは我が命であるが、義理のためにはそれさえ捨てるのが武士である。それを、たかが金銀を、義理よりも大切にして使うのを惜しむようなきたない根性の持ち主がどうしててかけがえのない一命を惜しげもなく捨てることができるであろうか。
倹約の道を行うに当たって心得がいるといったのはこのところである。》

《質実剛健勤倹尚武》が武士の品格であった。倹約は武士の本分を尽くすために必要とされた。倹約が高じて、吝嗇に陥り、その覚悟を失うことのないように誡めているのである。
今日的に考えれば、「安全第一、リスク回避は重要である。しかし、リスクテイクしなければれて飛躍するチャンスは失われる」という誡めである。

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